結婚する権利を持つ者、持たざる者

 

「彼氏いるんですか?」と聞かれると正直少しうれしい。

相手は他意なく聞いているのだろうけれど、この人にとって私は『普通に恋愛をしていい人間、異性から好意を抱かれる要素を持った人間』に映っているのかと思うとほっとする。

どこにでも居る、一般的な女性の一人になれた気がして安心するのだ。

『一般的』が人それぞれで決まりなんてないことも、そもそも大きく捉えれば『一般的』じゃない方が難しいこともわかっている。それでも私は『一般的』に憧れる。

 

私は目に障害がある。視野が徐々に狭くなっていく進行性の病気によるもので、治療法がなく難病指定されている。

幸い仕事をして一人で食べているし、周りの人にも恵まれて理解してもらえている。

若いころは自分の中で折り合いが付けられず本当に悩んだけれど、大人になってからは諦めもあるのかだいぶ楽になった。少しずつ認めることができているんだと思う。

でも躓いた。恋愛においては解決策が見出せないのだ。

 

私は何においても『深く狭く』を好む。

人間関係は顕著で、本当に好きな人と密に関わることができればそれでいい。

伴って結婚願望も昔から強いが、持病が進行した場合、一番大切な人に迷惑をかけてしまうこと、またそれによって嫌われることが一番こわいのだ。

相手に迷惑をかける可能性がある、むしろ高い自分に、仮に『人を好きになる権利』はあったとしも『結婚する権利』なんてないんじゃないかと思う。

そしてそんな自分を好きになってくれる人なんていないんじゃないかと。

 

なので私にとっての『一般的』は健常者だ。

堂々と人を好きになることができて、結婚する権利も持つ、絶対になることのできない眩しい存在。

でも障害者でもやっぱり恋がしたいし、好きな人に受け入れられたいと思う。

なので婚活なりで出会いを求めて、受け入れてもらえるかもしれないという僅かな望みに期待する。その人の邪魔に、迷惑にならない程度に。

 

現代の日本において結婚に権利なんていらないし、二人が納得できていればいいだけのこと。

そうはわかっていても向き合うのがこわくてスタートラインにも立てそうにない私はどうしたらいいのだろうか。

 

 

※※持病や障害のある方の結婚を否定している訳ではなく、健常者の方は悩みがないなどと思っている訳でも全くありません。

ただ自分のこととなると…という内容です。ご不快にさせてしまったら申し訳ありません。